遺言書作成の盲点
仲が良くても絶対NG!夫婦や親子で遺言書を「一緒に書く」のはなぜダメ?
「老後の終活として、夫婦で話し合って1通の遺言書にまとめて署名・捺印したい」「仲が良い家族だから、親子連名で財産の分け方を残したい」と考える方はとても多いです。
しかし、ここに大きな法律の罠があります。結論から言うと、2人以上の人が同じ書面で一緒に遺言を書くことは、法律で絶対に禁止されています。良かれと思って夫婦連名で書いた遺言書は、どれほど内容が立派であっても、死後に**「完全に無効(ただの紙クズ)」**になってしまうため注意が必要です。今回は、なぜ一緒に書いてはいけないのか、その理由と正しい解決策を正確に解説します。
法律が定める「共同遺言の禁止」とは?
日本の民法(第918条)には、「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない」という厳格なルールがあります。これには主に2つの大きな理由があります。
[1. 本人の本当の「自由な意思」を守るため]
同じ紙に一緒に書くとなると、例えば夫の意見が強かった場合、妻が「本当は自分の財産を別のきょうだいに譲りたいのに、夫の手前言えない」という状況が生まれやすくなります。遺言は、誰の圧力も受けず、たった一人の自由な意思で残さなければならないため、ペアで書くことが禁止されているのです。
[2. 後から「書き直し(撤回)」ができなくなるため]
遺言書は、生きているうちであれば何度でも書き直せるのが大原則です。しかし、1通の紙に夫婦で一緒に書いてしまうと、後から「やっぱり内容を変えたい」と思ったときに、もう片方の同意が必要なのか、夫が亡くなった後に妻が自分の分だけ書き直せるのかといった法律上の大混乱(バグ)が発生してしまいます。そのため、最初から完全に分けるルールになっています。
夫婦で一緒に終活を進めるための正しい方法
「一緒に書けないなら、どうすればいいのか」という疑問に対する、実務上もっとも安全なアプローチは以下の通りです。
【鉄則】話し合いは一緒にやり、書面は「1人1通ずつ」完全に分ける
解決策は極めてシンプルです。夫婦会議で「私が先に死んだらあなたに、あなたが先に死んだら子どもたちにこう分けよう」と方向性を一致させた上で、夫名義の遺言書と、妻名義の遺言書を、それぞれ別々の紙に1通ずつ作成します。これなら法律上の問題は一切ありません。
※「ノートの裏表」や「ホチキス留め」もNG
別々の紙であっても、1冊の大学ノートの表面に夫、裏面に妻が書いたり、2枚の紙をホチキスで閉じて1通の契約書のように一体化させたりすることも、「同一の証書」とみなされて無効になる判例があります。完全に独立した別のファイル・書類として作成してください。
遺言書作成の失敗と成功の分かれ道
▼ 無効になってしまう書き方
・「私たち夫婦の財産は、長男にすべて譲ります。 夫・田中太郎 印、妻・花子 印」
・同じ日付、同じ便箋の中に、2人の署名が並んでいる
▼ 正しく有効な書き方
・夫は「私の財産は妻に…」と書き、自分だけの署名・捺印をする
・妻は別の便箋に「私の財産は夫に…」と書き、自分だけの署名・捺印をする
せっかく夫婦で仲良く老後の話し合いをして遺言を残しても、形式的な法律のルールを知らないだけで、残された子どもたちに想いが伝わらなくなってしまいます。エンディングノートであれば連名で自由に書いても問題ありませんが、法的な「遺言書」を作る際は、必ず「1人1ファイルを独立させる」という実務上の鉄則を守り、不安な場合は公証役場で「公正証書遺言」をそれぞれ個別に作成することをお勧めします。

