仕事と介護の両立権利
仕事を辞めずに乗り切る!「介護休業」の正しい仕組みと活用法
親が倒れた、認知症が進んだといった突然の介護トラブルに直面したとき、パニックになって退職届を考えてしまう人がいます。しかし、これは実務上、最も避けるべき選択肢です。
労働者が仕事を辞めずに介護を両立できるよう、法律(育児介護休業法)で定められた強力な権利が「介護休業(かいごきゅうぎょう)」です。今回は、休業中に支払われる手当の仕組みや、両立を成功させるための「正しい取得の鉄則」を正確に解説します。
介護休業の基本ルール(日数と回数)
介護休業は、当日の急な通院付き添いなどに使う数日間の「介護休暇(基本無給)」とは異なり、体制を整えるための長期戦用の制度です。
[対象家族1人につき、通算「93日」まで取得可能]
法律上、親や配偶者、子供などが「常時介護を必要とする状態(要介護2以上が目安)」になった場合、労働者は合計で93日間の休みを申請することができます。この権利は会社側が拒否することはできません。
[最大「3回」まで分割して取得できる]
93日の枠を一度に使い切る必要はありません。例えば「1回目は親の退院と施設探しのための30日間」「2回目は状態が悪化した際の追加の手続きのための30日間」というように、状況に合わせて最大3回に分けてピンポイントで取得することが可能です。
休業中のお金:雇用保険から「介護休業給付金」が出る
介護休業期間中、会社から給与が出ない(無給)ケースが大半ですが、その代わりに国の雇用保険から経済的な支援を受けることができます。
[支給額は休業前賃金の「67%」]
ハローワークへ申請手続きを行うことで、休む前の給与の日給換算の約3分の2(67%)に相当する手当が、休んだ日数分だけ支給されます。さらに、介護休業期間中は**「社会保険料(健康保険・厚生年金)」の免除**も受けられるため、実質的な手取り額は通常の給与の8割程度が確保される計算になります。
[給付金をもらうための主な要件]
①雇用保険に加入していること、②休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12ヶ月以上あること、などが条件です。正社員だけでなく、一定の要件を満たせばパートや契約社員の方も対象になります。
介護離職を防ぐための「正しい取得の鉄則」
多くの人がやってしまう最大の失敗は、「93日間、自分が実家にこもって親の面倒を見るために休む」という使い方です。これをやると、94日目以降に復職できず、結果的に介護離職へ一直線に向かうことになります。
介護休業は「介護の『体制』を作るための準備期間」
介護休業を取る本当の目的は、自分がプレイヤーになることではなく、**「自分が仕事を続けながらでも、親の生活が回る仕組み(外注ネットワーク)を整えること」**です。この93日間のうちにやるべき実務は以下の3つに集約されます。
・ケアマネジャーと緊密に連絡を取り、最適なケアプランを作成する
・デイサービス、ショートステイ、訪問介護などの公的サービスを契約する
・自宅のバリアフリー改修や、必要に応じて特別養護老人ホームなどの施設を探し、申し込む
「自分が仕事に戻っても、昼間はデイサービスに行っているから大丈夫」「夜間はショートステイを組み合わせるから安心だ」というチーム体制を完成させてから、職場へ復帰するのが正しい介護休業の使い方です。
仕事と介護の両立に向けて
▼ 失敗しやすい介護休業
・会社に介護のことを一切隠したまま、突然明日から休みたいと告げる
・休業期間中、外部の介護サービスを頼らず、自分だけでオムツ交換や食事介助をして過ごす
▼ 成功しやすい介護休業
・開始予定日の2週間前(法律上の期限)までに、会社の人事や上司へ正式な書面で申請する
・休業中にケアマネジャーと「復職後に自分が残業免除や短時間勤務になること」を想定したプランを組む
親の介護は、いつまで続くかゴールが見えないマラソンのようなものです。最初から全力疾走で自分がすべてを抱え込もうとすれば、確実に途中で仕事も私生活も破綻します。介護のプロである事業者やケアマネジャーを頼り、自分自身は「仕事を続けるマネージャー」というポジションを維持すること。そのための両立体制を作る盾として、国の制度である「介護休業」を堂々と、かつ戦略的に使い倒してください。

