新しいライフスタイル
死ぬためではなく生きるため?若者の間で「エンディングノート」が流行る理由
「エンディングノート」や「終活」と聞くと、人生の後半を迎えたシニア世代が行うもの、というイメージが根強くありました。
しかし最近、20代や30代といった若い世代の間でエンディングノートを書き始める人が増えています。SNSでも進捗をシェアしたり、若者向けのポップなデザインのノートが登場したりと、これまでの「暗い・縁起が悪い」というイメージを覆すトレンドとなっています。なぜ、今あえて若者が終活ノートを手にするのか、そのリアルな背景を正確に解説します。
若者がエンディングノートを書く3つのリアルな目的
シニア世代が「遺産や相続」を目的に書くのに対し、若者世代のノートの目的は「デジタル・趣味・メンタル」に集中しているのが大きな特徴です。
1. 最大の目的は「デジタル遺品(SNS・スマホ)」の管理
生まれたときからネットがあるデジタルネイティブ世代にとって、スマホの中身は最大のプライバシーです。「自分がもし急に事故や病気で倒れたら、SNSのアカウントはどうなるのか」「サブスクの解約はどうすればいいか」という現実的な問題に直面しています。親に見られたくない写真のデータ消去方法や、死後にアカウントを削除(垢消し)してほしいという要望を遺すためにノートが使われています。
2. 遺された「推し活グッズ」の出口戦略
アニメ、アイドル、ゲームなど、趣味のコレクション(推し活グッズ)を大量に持っている若者は少なくありません。価値がわからない親にゴミとして捨てられるのを防ぐため、また家族に迷惑をかけないために、「このグッズはフリマアプリで売ってほしい」「このコレクションはオタク仲間の〇〇君に譲ってほしい」といった具体的な引継ぎ先を指定するケースが増えています。
3. 人生のロードマップを描く「自己分析ツール」として
多くのエンディングノートには「これまで楽しかったこと」「これからやりたいこと」を書き出すページがあります。若者たちはこれを就職活動の自己分析や、今後のライフプランニングの道具として捉えています。死を意識することで、逆に「今、限られた時間の中で本当にやりたいことは何か」が明確になり、これからの生き方を見つめ直すポジティブなキッカケにしています。
若者のノートに書かれる「定番の項目」
一般的なエンディングノートは「お墓」や「遺産」の項目が多いですが、若者の間では以下のような現代的な内容が主流です。
・スマホのロック解除と、見られたくないデータの削除手順
・各種SNS(X、Instagram、TikTokなど)の死後の処置(削除か、追悼アカウント化か)
・愛犬・愛猫など、大切なペットの次の飼い主への引き継ぎ願い
・もしもの時の、延命治療に対する自分自身のスタンス
・友人・知人の連絡先一覧(親が知らない、ネット上の大切な繋がり)
親が自分の交友関係を把握していないことが多いため、本当に連絡してほしいネットの友人などのアカウントや連絡先を書き残しておくパターンが非常に増えています。
シニアの終活と若者の終活の違い
▼ シニア世代のエンディングノート
・主な目的:相続トラブルの回避、葬儀やお墓の決定、人生の総括
・視点:残される家族にかける「迷惑」を最小限にするため
▼ 若者世代のエンディングノート
・主な目的:デジタル情報の整理、趣味の引き継ぎ、将来の目標設定
・視点:今のプライバシーを守り、これからの人生をバグなく生きるため
災害や突然の事故、病気など、現代社会は「いつ何が起こるかわからない」という不安と隣り合わせです。だからこそ、若者にとってのエンディングノートは不吉なものではなく、スマホのデータをバックアップしておくのと同じような、ごく当たり前の「リスク管理」の一環として受け入れられています。重く捉えず、日記の延長としてパスワードや趣味の整理から気軽に始めてみるのが、今のスマートな若者スタイルのようです。

